バイブコレクター桃子の大人のおもちゃレポ 番外編 FunFactoryインタビュー
「バイブにも、世界的なブランドがあるんですよ」というと、失笑ぎみなリアクションが返ってくる。そんな時代もありましたが、いまはそれがちょっと懐かしく思えます。少なくともアダルトグッズに関心の高い層なら、LELOとかウーマナイザーとかそうしたブランド名に耳なじみがある、体感としてそう感じます。国内だったらirohaもね。 それも道理で、5、6年前ほどから(これも体感なのですが)海外ブランドが続々と日本上陸を果たすようになりました。目に美しく、高品質、お値段はちょっとするけどそれに見合った満足感を得られる数々のブランド。きっとこれからも、増えていくでしょう。
私がバイブのコレクションをはじめたとき、国内で比較的気軽に入手できる海外ブランドバイブといえば、スウェーデンのLELOかドイツのFunFactoryだけでした。両者とも、いまでもトップブランドとして君臨していますし、私も「ここのはハズレがない」と信頼を寄せています。 そのFunFactoryの広報さんが、来日してる! という情報を聞きつけたのは、4月某日のこと。どんな人だろ~、お話聞きたい~と好奇心丸出しで、会いにいってきました!
女性がもっと買いやすいグッズを作ろうと考えて開発
ローラ: はじめまして、ローラです。香港でアダルトグッズの展示会があったので、日本にも立ち寄ってみました。
きれいなブロンドとビッグスマイルで、あかるいオーラを放ちまくりのローラさんを前にすると、つられてこちらも笑顔になります。同ブランドのグッズは、ひと目で「あ、FunFactoryの商品だ!」とひと目でわかる、ポップなカラーリングが魅力のひとつですが、なるほど、ローラさんにも通じるものを感じます。
ローラ: おっしゃるとおり、色とりどりの明るいカラーは私たちがこだわっていることのひとつです。ブレーメンを拠点としてFunFactoryが創業したのは1996年ですが、当時、市場にあったグッズは男性器そのままの形のものや、暗い色合いのものばかりでした。女友だちから「ディルドがほしいのに、買いたいものがない」と相談を受けた2人の男性エンジニアが、女性にやさしいグッズ、女性がもっと買いやすいグッズを作ろうと考えて開発し、ブランドを起ち上げました。
これは驚きました。「女性の琴線に触れるグッズが少ない」……日本は長らくこの状態が続いていて、だからこそ私は欧米ブランドに憧れたわけですが、ドイツでも20年前は同じ現象が起きていたとは。
ローラ: だからこそ、明るい色というのは大事でした。それと医療現場でも使われている水準のシリコン素材というのが、私たちが守り続けているものです。これは当時の市場を考えると、とても革新的だったと思います。それから、安心して使ってもらうためには品質管理も重要ですよね。私たちは創業時からずっと、すべての商品を国内の工場で製造しています。エラーや故障があったら、すぐに対応できるようにしておく必要があるからです。
同ブランドが起ち上げられてた20数年前……当時の日本の市場は私も知りませんが、「男性が考えるバイブ」が主流だったことは容易に想像がつきます。女性の感性、安全が重視されるようになったのはつい最近のこと。 私はこれを、バイブに限ったことではないと考えています。広く工業製品を作る現場は“オトコの仕事場”というイメージが強く、女性が製造に携わることはあっても、商品の企画、開発を担うのは主に男性。さらにアダルトグッズの場合は「男性が興奮するバイブを、女性に使う」という構図があるため、女性の嗜好や安全が重んじられなかったのではないか、と。ドイツではそんなことないのでしょうか。
ローラ: 創業者の男性ふたりは現在もエンジニアとして開発の現場にいますが、会社全体としては女性が6割ほどを占めています。開発の責任者にも女性がいますし、倉庫などの送品管理部門にも女性が必ずいます。重いものを運ぶ仕事だってしていますよ。でも、私たちの特徴は性別だけでなくセクシャリティ、国籍、年代……すべてにおいて幅広い人材がいるので、いろんな声を活かしながら商品作りができることだと思います。
ドイツのアダルトグッズ事情
さて、FunFactory自体についてもさることながら、私、ドイツのアダルトグッズ事情に興味があります。日本ではまだまだ女性が自分でバイブなどのグッズを買うのは一般的とはいえませんし、購入を考えてはいても「どこに隠そう」「家族にバレるのでは」と心配する人も少なくありません(私はそんな相談をよく受けます)。 ……とお話したところ、ローラさんは少し不思議そうな顔をしました。
ローラ: ドイツの女性はオープンですから、自分で買うのも使うのも“ごく普通”のことだと思われています。ひとりで使うだけじゃなくて、カップルがもっと関係を深めたいときや自分たちの持っているものが古くなったとき、何を買うのかお互いに話し合って選ぶのも一般的です。生活必需品に近いイメージですね。
バイブを買うなんてヘンな女って思われないかな、と考える必要は皆無ってことですね!
ローラ: 最近ではアダルトグッズショップのCMがテレビで放映されているので、さらにオープンになった感じですね。
テレビで!? CMを!? ものすごく驚いた私に、ローラさんがYouTubeから動画を探し、「いろんなCMがあるなかでも、これは特に人気です」と見せてくれたのがコチラ。
なんてキュート! すごくおしゃれでポップなCMだけど、日本ではこれがテレビで流れるって考えられないなぁ。
ローラ: ドイツでも最初は深夜帯でのみ放映されていたんですが、そのうちゴールデンタイムにも流れるようになりました。そしたら、女性同士で「私、アレを買ったの」「私はコレ!」という会話が聞かれるようになり、人々の意識も変わっていったように思います。ほかの国でも、それぞれ事情は違うでしょうけれど、オープンにしていくことで今よりもっと受け入れられるようになるかもしれませんね。
アジア圏ではヨーロッパ圏と比べ、小さいものが売れる
最後に、ローラさんから逆に質問されました。
ローラ: 私たちの商品で「もっとこうしてほしい」「こんなモノがほしい」というのがあれば教えてください。
私、即答しましたね。「もっと小さいものを!」と。
ローラ: アジア圏ではヨーロッパ圏と比べ、小さいものが売れる傾向がありますね。ピストンするバイブ「ビーストロニックフュージョン」のように仕掛けが多いものは世界中で人気ですが、サイズが大きすぎるという声が多く届きました。発売当時は技術的に内部のメカを小さくするのは不可能でしたが、技術が進んでで小型化できたので「ストロニックG」を発売したんです。
私も初めて「ビーストロニックフュージョン」を使用したときは、その大きさを前に敗北宣言しそうになりました。だから「ストロニックG」の発売は大歓迎だったのですが、それでも、もっともっと小さくていいような……。アジア人女性は欧米人女性よりも身体が小さいので、ぜひご一考をお願いしたいです! それと同時に「太さだけでなく、もっと短いバイブを」というのもお願いしてみました。
ローラ: 長いとダメなのですか?
自分で使うぶんにはいいのですが、バイブに慣れていない男性が使うとズボズボと抜き差しすることがあり、これだと奥に直撃して女性が痛い思いをするだけ……ということがよくあります。使い方を覚えてもらえばいいってお話ではありますが、女性にしても短いほうが心理的抵抗が少ないですよね。
ローラ: わかりました、私たちが日本の市場で成功したいならとにかく「more small」ということですね!
そして、もうひとつリクエストを。FunFactoryのデザイン&高品質なコンドームやローションなどの衛生用品がもっとたくさんあるとすごくうれしい! そんな私の願いを笑顔で受け止めてくれたローラさん。ありがとうございました。これからも私、バイブレーター桃子はFunFactoryを応援します。
取材協力:ラブピースクラブ